ある日の生徒の保護者からの電話
「先生どういうことですか?」
「はい?××さんですか?」「はい。そうです」
「いつもありがとうございます」「一体どうなっているんですか?『先生が突然どなった』って子どもがいっています」
「いえ。突然ではなく・・」「うちの子は『塾にもう行きたくない』といっています」
「いえ。実はですね」「もう辞めます」
「お母さん。ちょっと待ってください」「私も先生を信じてうちの子をまかせたのに」
「××さん。ちょっと待ってください。
××君は授業中にずっと騒がしかったんです。それで何度も注意をしたのですが、いうことを聞かずに、昨日となりの子にちょっかいをかけたので叱ったんです」
「先生。息子はそんなこと一言もいっていませんでしたよ。突然怒り出したって」
「いえ、そうではなくて」「もう結構です。退塾しますので」
「あっ、××さん」(ガチャ)
「ツー。ツー」
これはある塾の話。塾長は嘆く。
「最近の保護者はどうしようもない」
そして、凹む。
何が悪かったのか?
こういった事例はよくある話。そして、こういったことは私も経験してきました。いや、それってないよ。
「叱って、クレーム。そして退塾」
です。どちらかというと私は相手とのやり方はうまくできる方だと思っています。ですが、
「こういった痛い目に遭ってきた」
のです。そして、最悪の場合は
「クレーム。退塾。そして、悪評」
となっていきます。こうなると
「突然生徒が入ってこなくなる」
「生徒が辞めていく」
ということが続きます。そして、塾はじり貧になって最後に廃業です。
一体誰が悪かったのか?
「そりゃその保護者でしょ」
と思うかも知れません。確かに
「授業中騒がしい生徒を注意する」
何て当然の話。その先生の主張は正しい。
でも、そうすると「生徒と保護者が悪い」とするのでしょうか?いえ違います。それは
「塾長のやり方が悪い」
のです。
「えっなんでですか?堀さんも保護者の生徒の味方なんですか?」
と思うかも知れません。ここで間違って欲しくないのは「塾長が悪い」ではなく、「塾長のやり方」なのです。
人によって違うとは思いますが、私も塾を経営していますので、この先生の気持ちはよくわかります。
そして、先生の主張は間違っていないことが多いです。
実際に同じように「生徒をすごくきつく叱っても卒業してからも連絡をくれる保護者」もいますから。
何が違ったのか?
それは「コミュニケーション」のとり方だったのです。きつく叱っても保護者とコミュニケーションが取れていると
「先生は正しい。先生の味方」
になってくれますが、それができていないと
「先生が悪い。子どもは絶対正しい」
となるのです
主張は正しい。でも生徒は辞める
大切なのは「自分の主張が正しい」と声高に叫ぶことではないのです。そんなことをいっても生徒が辞めて売上が下がるという事実は変わりません。
どんなに正論であっても
どんなに素晴らしい主張でも
相手がそれを理解し、行動を変えてもらえないのであればそれは無意味となってしまうのです。
大切なことは
「相手に学習させる」
ことです。学習というと勉強のように思いますが
学習とは「知識を得たり体験を通じたりして行動を変えること」です。ただ、「知ること」ではないのです。だから行動を変えていなかったら学習したことにはならないのです。
力を入れるところは
「自分の主張が正しいことを力説することではなく、それをどうやって相手に届けて、理解してもらい、そして行動を変えてもらうのか」
なのです。そちらに全力を尽くすことなのです。それは
「××さんが悪い」
というものではないのです。基本的に
「××さんが悪い」
と誰かのせいにすると絶対に生産的にはなりません。よくあるのが
「生徒のせい」
「保護者のせい」
「スタッフのせい」
「先生のせい」
と誰かのせいにしてしまうことです。この「~のせい」にしてしまうとそこで塾の成長が止まってしまうからです。
責任をすべてその人に押し付けてしまうと楽です。それで終わりますから。
でも成長したかったら「誰かのせい」にしないことです。
もし、どうしても「誰かのせい」としたいのであれば、それすべて「塾長であるあなたのせい」とすればいいのです。
退塾3名。うちのやり方
私のところは通信講座なのでやはり通常の塾よりも退塾率は高いと思います。これはオフラインもオンラインの両方やってみての素直な感想です。
「それは先生が悪いのでは?」
と思うかも知れませんが、私のところでは他の塾では塾長クラスと組んでやっています。
オフラインの塾でやっている先生もいますのでその違いはよくわかります。
そして退塾が出ます。同じ指導していた先生から3名です。このとき
「その先生が悪い」
何て話はしません。もちろん、その先生に原因はあるかも知れませんが、私は全然そう思いません。
その先生を全身で信頼しているから。また、その先生のせいにしても塾は成長しないからです。
それに当然、その先生もすごく責任を感じているはずです。その先生とは会話はこんな感じです。
私 「3名辞めましたね」
先生「すみません」
私 「A君ですか。どうでしたか?」
先生「あの生徒は私が悪かったんです。うまくコミュニケーションが取れていなかったので」
私 「そうですか。わかりました。Bさんはどうでしたか?」
先生「Bさんはすぐに答えを欲しがるのでそれはダメだよ。といっても聞いてもらえませんでした。それが変えられなかった」
私 「そうですか。わかりました。ではCさんは・・」
とこんな感じです。すごく「淡々」と話をします。本当に「淡々」です。これは、息子との会話でも同じです。
「ダメじゃないか。そんなことでは」
何て一言もいいません。
そして、退塾やトラブルがあったとき、スタッフとの話中に私の頭の中にあるのは
「今先生が不足していることをどうやって仕組みでカバーするのか?」
ということだけです。そして、
「次の生徒を連れてくること」
です。決して、
「その先生が悪い」
というものではないからです。もちろん、人間ですからそう思うのかも知れません。というのは最終的には塾長である私のせいだからです。
それにそんなことを考えても塾は決して成長しません。それよりもそれをどうやって仕組みでカバーしていくを考えているのです。
その方法を紹介する前にクレームの話です。
お母さんを泣かせる面談
私の面談ではお母さんが泣き出すことが多々あります。直接の面談でも、電話での面談でもです。
その理由は簡単「自分のことを理解してもらえた」とお母さんが思ったからです。実は冒頭の親子さんにはこんな共通点があります。
騒がしい子の家のお母さんと話をするときは、決して子どもを攻める話をしないようにします。
「えっ、子どもが騒がしいのに」
と思うかも知れません。というのはそのお母さんは
「学校や他からも責められている可能性が高い」
からです。そして、電話や面談では
「何かいわれるのではないか。何かいわれるのではないか」
と内心は怯えています。ビクビクと。そして、話す前から「ファイティングボーズ」を取っています。
そして、子どもを非難する内容がくると「ほらきた。負けないぞ。反撃」
とくってかかるのです。いわゆる
「モンスターピアレント」
に変える瞬間です。心の奥底では「自分の子も少しは悪いのかも」と思っていても相手を攻撃することに力を入れます。
「塾が悪い」「先生が悪い」
と。そして、塾長とのパドルです。塾長も「自分は悪くない。子どもは悪い」と思っているので解決することはなく、さらに悪化します。
ではどうするのか?
これは私も何度も経験している話です。私としたら、「自分のいっていることは正しい」と思っていますから、自分の主張を通すために理屈で相手をねじ伏せようとします。
「俺は正しい。俺は正しい」
と。そうするとますますこじれます。そして、退塾。それですめばいいですが、そのあと「悪評」となってしまうのです。
「事実」がどうであれ、「正しいかどうか」であれ、相手は感情で動きます。それで悪評をまき散らすのです。
ここでやることとは
「自分は90%正しい。でも10%は悪かった」
というのであればその10%について反省して謝罪すればいいのです。そして、それよりも大切なことは
「相手との対立構造を無くす」
ことなのです。相手と向かいあって相手を責めても意味がありません。
それよりも子どものためにどうやっていくのか・と同じ方向を向けばいいのです。
なぜお母さんは泣くのか?
最初にやるのがお母さんのことを理解しようとしていることを伝えることです。
「お母さん大変でしたね」
「お母さんは子どもをすごく大切にされているんですね」
と最初に話をすると相手の「ファイティングポーズ」がなくなります。そこからお母さんは打ち解けて
「先生実は息子は学校からでも同じことをいわれて辛いです」
と泣き出すのです。ハンカチで目頭を押さえながら・・・。そして
「先生は私のことをわかってくれてる」
と。そうすると何かあっても今度は「先生の味方。うちの子は悪い」と変えっていくのです。何かあったら
「先生はおまえのことを考えていくれている」
と。
退塾「0」にした方法
では実際にどうやって仕組みでカバーしていくのか話をします。
FAX指導していると3か月くらいで辞める家庭がありました。そのパターンは決まっていて
「こちらの指示を無視して勝手やる親子」
だったのです。どんな感じなのかというと
スタッフの指示 指示無視親子 スタッフの指示 指示無視親子
「レベル1ずつ丁寧にやって送ってください」
「レベル1.2.3とまとめて送ってくる」
「レベル2【だけ】丁寧に送ってください」
「レベル4.5.6送ってくる」
こんな感じです。そして、3か月もすると
「成績が全然上がらないので辞めます」
と辞めていきます。このときに
「指示無視親子さんはダメだ。まったく」
と憤慨していても何の解決もしません。それよりも
「あのところは成績が上がらなかった」
といわれるのがオチです。ここで
「論理エンジンは丁寧にやらないとダメだ」
と主張しても意味がないのです。もちろん、たとえそれが真実であってもです。
では、どうやってたのか?それを
「仕組みでカバー」
したのです。それも、1つではなく、
「4つの仕組みでカバー」
していきました。それによって
「スタッフのストレスが減る」
「その指示無視タイプが0になる」
そして、なによりも
「そのタイプの退塾は【0】」になったのです。
ではどういう仕組みを作ったのか?
塾長の正しい主張を相手に実行させる仕組み作り
何名かの「指示無視親子」を指導してますとそれにはある一定の傾向があることがわかってきました。
それは
「保護者との電話」
でわかったきました。こんなタイプが指示を無視して、絶対に成績の上がらない親子です。
それは「少しでも早く終わらせたい。問題集を先に進めば上がる」「予算をケチって短い期間でたくさんやらせる家」です。
事前にわかってきたので、最初から入塾させないか、次の仕組みでカバーすることにしました。
【仕組み1】入る前のブログで告知
私のメールやブログやサイトを読んでくれる人が多いので、そこで文章でその内容を告知しました。
ズバリ
「論理エンジンで成績の上がる子、上がらない子」
です。次に動画を撮ってそれを公開していきました。以下がその動画です。
【仕組み2】電話の面談でのジャブトーク
入塾の相談したときにもこんな話をして、指示に従わない家は成績が伸びない話をします。
私
「・・それで、お母さん。正直にいうと論理エンジンをやるとムチャクチャ成績が上がる家とまったく上がらない家があるんです。わかりますか?」母
「さあ」私
「お母さんのところはそんなことはないですが、上がらないところは最初からお断りしているんです。成績が上がらないのはわかっているから」お母さん
「はい」私
「それは、先に先に進もうとする家は絶対に上がらないんです。というのは成績の上がる家と目的が違うです」お母さん
「はい」私
「それは、成績の上がる家は論理エンジンの中身を【身につけよう】としていますが、上がらないご家庭は【やればいいだろう】と思って先に先に進むだけなのです」
と。こういう話をしておくのです。そうすると
「指示無視の牽制」
になるのです。そして次です。
【仕組み3】ビデオレターによる啓蒙
指導をする前に最初に生徒にもうちでは1件ごとにビデオレターを送っています。1人1人にです。これは100%見ますので、ここも「成績の上がる子、上がらない子」という話をします。
そして、本人にも納得させます。
【仕組み4】通常のメールでの告知
そして、スタートしたら会員メールで成績の上がった子の内容や、ビデオを送って丁寧にする話をします。
こうやって「4回仕掛けて」丁度浸透していくのです。
「1回いった」
「この前いった」
だけでは人間は変えらないのです。しつこくしつこくやっていくことで理解して行動が変えるのです。
そうやって、「誰かのせい」ではなく「こちらの仕組みでカバー」していくと相手に左右されない安定した経営ができるのです。