経営の考え方

来月2億円が足らない(実話)

財務担当「このままでは来月20日には2億円が足らなくなります」
営業部長「20日まではあと1か月しかありません」

社長  「・・・・・」
私   (社長の顔を見る)

社長  「これは役員を招集するしてもらえますか」
私   「はい」

辺りはは重い雰囲気に包まれた。これは3月某日。資金担当者から

「4月20日に資金が2億足らない」

という話が出た。

どうしてこんなことになったのか?

そこは元々全国でチェーン展開する会社。私はそこの本部にいた。その会社は急成長を遂げていた。

多いときで1か月で従業員の数が2倍になるぐらいの勢いだ。

当時はショッピングセンターの出店ブームにわいた。大手ショッピングセンターからの引く手もあまただった。

ただ、出店するにもお金がかかった。1店舗出店するには1億円近くがかかる。出店攻勢が続いた。お金は当然借り入れだ。

借入額がどんどん増えていった。そして、資金は常にタイト。資金を移動する、5、10日は資金を移動する日は胃を握られるような感じだった。

それに最悪なことは、当初予定していた売上が見込めないのだ。3店舗出店したら3億円の売上が、実際は2億5000万にしかならない。

当然だが資金が足らなくなる。緊急で集められた夜中の会議で私が提案した「資金対策」は以下の方法だった。

資金不足になったとき考えるのは6つの利害関係にアプローチにするのだ。

6つの利害関係とは以下の6つだ(今は多少変わっている)

「得意先」「仕入れ先」「金融機関」「従業員」「国家公共機関」「株主」
(創造経営センターを参考)

これらの関係者に協力を仰ぐのだ。それぞれ担当者を決めて、協力を頼んだ。

当然だが、これらの関係者は会社が潰れると困るので、協力してくれる率が高い。

しかし、危険も伴う。というのは、会社が倒産することがわかったら、会社から資金を引き上げていくことも考えられるからだ。

例えば、金融機関は貸し付けたお金を回収しようと躍起になる。

仕入れ先は商品を納入してくれなくなる。従業員は退職していく。そういった危険もはらんでいるのだ。そして、実際は以下に行った。

「得意先」(担当:販売部長)
理由をつけてバーゲンを行った。とにかく資金が必要なので利益を度外視して、売上を上げた。

バーゲンセールで売って資金を集めた。

「仕入れ先」(担当:社長、財務)
非常な危険をはらむが、大きな得意先に「手形」のジャンプをお願いに行った。

「手形のジャンプ」というのは、一度支払った手形を返してもらい、日付を変えてもらうのだ。

例えば、4月20日の手形であれば5月20日だ。ただ、気をつけないといけないのは噂が広まるということ。

「倒産する」という噂が広まれば、仕入れ先もいろいろ理由をつけられて商品が納入されない。

そうすると、倒産へ加速するのだ。噂はとイッキに広まるので、金額の大きいところに限定しないといけない。

そして、取引が長くて信頼できるところだ

「金融機関」(担当;社長、財務)
メインバンクに相談。ただ、気をつけないと取引額によっては銀行が回収に力を入れ始めるとイッキに終了する。
追加融資を取り付けたが、条件がつけられた。

「従業員」(担当:人事、部長)
私が各店舗の責任者に説明。「給与の遅配」を電話で説明となった。もちろん、電話で済む話ではなく、最終的に各店舗に責任者が説明に行った。

中には怒り出すスタッフも。当然と言えば当然だけれども、普段のコミュニケーションが実って私には風当たりが強くなかった。

その代わり「部長を出せ」と。従業員の給与遅らせることは、今では問題になって考えられないかもしれない。

実は私がいた会社の本部では1年間給与の遅配が続いていたのだ。1年間の給与の遅配とは1年後にもらえるというわけではなく、1年間ずっと給与が遅れていたのだ。

例えば、末日支払いの給与であれば、翌月の5日に支払うとか、5日、10日、15日と分割して払われるとかそんな形だ。

当然、支払いの手間も2倍3倍かかる。

「国家公共機関」(担当:社長、財務)
さらに借り入れはできないか、調べた。国金はすでに借り入れていたので、国金は無理だった。

「株主」(担当:社長)
株主は社長の血縁だったので、説明してさらに出資をお願いしてもらった。

仕事は忙しくなった。私は家に帰らなくなった。1年間会社で寝泊まりした。食事とお風呂以外はすべて職場で生活した。

また寝不足にもなった。よく銀行に行ったときには銀行の待ち時間に寝てしまい、受け付けの人にも起こされた。

当時の私の家では長男が生まれていた。通常、バラ色のはずが心も体もボロボロだった。

体力的にも精神的にも限界だった。支払いでクレームを受けるのはすべて支払いをする現場だ。

会社を代表して「罵倒された」「罵られた」そして、辛かった。疲れ切っていた。

それは私だけではなかった。他の従業員もよく働いた。休みの日も出勤して働いた。

着替えを取りに帰るために一旦家に帰った。そして、朝5時半に出社してみると財務担当が働いていた。

パートの女の人も働いていた。銀行に提出するための書類整えるためだ。徹夜していた。

しかし、会社は傾いていった。 そして、倒産した。

何が悪かったのか?結局は会社が倒産するというのはすべてトップの責任だ。

当時は優秀な人材が揃っていた。しかし、トップが成長しない限り、会社は成長しない。

塾も同じだ。塾長が成長しない限り、塾も成長しないのだ。

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